近年の生成AIモデルは驚くほど高精度になり、コード生成・分析・文章作成など幅広いタスクをこなせるようになりました。しかし、それでも避けて通れない制約があります。
それが 「知識のカットオフ(Knowledge Cutoff)」 です。
生成AIの学習は、膨大なデータをもとに行われます。そのためもちろん、当時データがなかったことは「そもそも知らない」ということになります。
これが生成AIにとっての“知識の限界”であり、いつまでのデータをもとに学習されたかが「知識のカットオフ(Knowledge Cutoff)」とされています。
例えば OpenAI の GPT-5.1 では、次のように明示されています。
Sep 30, 2024 knowledge cutoff
つまり、2024年10月以降に起きた出来事は、モデル内部の知識だけでは回答できません。
参考までに、2025年11月にリリースされたモデルのカットオフ日を見てみましょう。
| モデル名 | 提供元 | リリース | カットオフ |
|---|---|---|---|
| gemini-3-pro-preview | Google / Gemini | 2025年11月 | 2025年1月 |
| gpt-5.1 | OpenAI | 2025年11月 | 2024年9月30日 |
| claude-opus-4-5 | Anthropic | 2025年11月 | 2025年8月 |
上記を見て分かる通り、2025年11月にリリースされたからといって、2025年11月までの知識を持ってるわけではありません。
学習データの作成や学習自体に時間がかかるため、どうしても最新の知識を有する生成AIを作成することは難しいのです。
カットオフ以降の情報を扱う最も有効な方法は、Web Search機能です。
ChatGPTを始め、この機能はすでに多くのサービスで実装されており、デフォルト機能となっていることが多いので、すでに使ったことあるという方も多いと思います。
まずはWeb Searchを使わずにどのように回答されるのかを確認し、その後Web Searchを導入してみましょう。
今回はデモ例として、次の質問を GPT-5.1 に投げてみます。
気軽に検証ができる、OpenAI PlatformのChat機能で試してみましょう。
まずはWeb Search機能を使用しないで以下の質問をしてみます。
OpenAIがリリースしているモデルの中で、2025年11月にリリースされたのは何と言うモデルですか?
前述の通り、GPT-5.1は2024年9月までのデータで学習されているので、それ以降に起こったできごとについては全く知らないはずです。
レスポンスはこのようになります。

しっかりと、現在の情報を持っていないことを伝えてくれていますね。
では次に、Web Search機能をONにして質問してみます。
ONにする方法は、Tools > Add > Web search > Add の順にクリックしていくだけで簡単にできます。
任意で「User's location」なども設定できます。


無事設定が完了すると、Toolsの箇所にWeb Searchと出るので、確認しましょう。

準備ができたら、先ほどと全く同じ質問をしてみます。

ログを確認してみると、Webサイトを参照して回答していることが確認できます。
このように、Web Searchを設定すると、GPTがWeb Searchが必要かどうかを判断し、必要な場合には検索して最新情報を手に入れる、ということを自動してくれます。
何にでも使えるWeb Searchですが、例えばR&Dチームではプログラミングのときに以下のように活用しています。
生成AIにまつわるライブラリなどは進化が早く、記述方法も日に日に大きく変わっていきます。
去年の書き方が今はもう古い、なんてことも多くあります。
その時に、バージョンやドキュメントページを伝えることで、最新の書き方に対応したソースコードを作成してもらいます。
他にも使用例は多くあるので、機会があればこのブログで紹介していければと思います。
では、Web Searchをいつもセットしておけばよいかと言うと、そうではありません。
Web Searchを使用すると、回答時間とコストの増加につながります。
OpenAI PlatformのChat機能 はAPIと同様の料金体系となっています。
そのため、会話のトークン量に応じた従量課金制となっています。
また下記に記載の通り、Web Searchを使用すると別途下記の料金がかかります。
Web search (all models): $10.00 / 1k calls + search content tokens billed at model rates
…(略)
Web search: There are two components that contribute to the cost of using the web search tool: (1) tool calls and (2) search content tokens. Tool calls are billed per 1000 calls, according to the tool version and model type. The billing dashboard and invoices will report these line items as “web search tool calls.”
Search content tokens are tokens retrieved from the search index and fed to the model alongside your prompt to generate an answer. These are billed at the model’s input token rate, unless otherwise specified.OpenAI Pricing を一部改変
つまり、消費したトークンとは別に、Web Search 1,000回あたり10$かかることになります。
もちろんAIが不要と判断した場合は使用されませんが、絶対ではないため、状況により使い分けることをおすすめします。
※ 料金体系は2025年12月16日時点での情報です。最新情報は、OpenAI Pricingを参照して下さい。
今回は知識のカットオフとその解決方法についてご紹介しました。
Web Searchという、目新しさのある内容ではなかったと思いますが、カットオフについて意識している方はどれくらいいましたでしょうか。
全く意識しなくても便利に使えてしまう――それが生成AIやそのサービスのすごいところではありますが、“仕組みを理解しているかどうか” で、活用の質は大きく変わります。
特に今回のような知識のカットオフは、「なぜこの回答になったのか?」、「どこまでがモデルの知識で、どこからが最新情報なのか?」を判断する上でとても重要なポイントです。
そして、最新情報が必要な場面では、Web Search機能を組み合わせることで、この知識の限界を補完できるようになりました。
この2つをうまく扱うことで、生成AIをこれまで以上に信頼して使えるようになります。
Tech Funでは、お客様のフェーズに合わせ、生成AI活用に向けた支援を3つのパックでご提供しています。
生成AIに限らず、Web・業務システム開発やインフラ設計など、技術領域を問わずご相談を承っています。「何から始めれば良いか分からない」という段階でも構いませんので、ぜひお気軽にお問い合わせください。