現役のITエンジニアが、 システム開発の現場で求められる知識を発信
記事検索

MCPサーバーを活用する【後編:実行編】

生成AI関連

はじめに

前編では、Excel設計書を安全に読み取るためのMCPサーバー(Excel MCP Server)を作成しました。
後編となる本記事では、このExcel MCP Serverを GitHub Copilot(VS Code)から実際に呼び出し、利用してみるというデモを行います。
設計書を読ませ、その内容を基にFastAPIコードを自動生成させる、というものです。
現場でよくある「Excelで作られたAPI設計書を読み取り、実装に落とし込みたい」という課題を、MCPがどのように解決できるのかを体験できる内容です。

前編はこちら → MCPサーバーを活用する【前編:自作編】

Excel MCP Server について

前編で作成したMCPサーバーは、以下の2機能だけを持つ最低限の構成でした。

  • Excelファイルのシート一覧を返す
  • 指定したシートの内容をCSV形式で返す

Copilotは、このサーバーを“外部ツール”として認識し、チャットの途中で呼び出すことができます。
それでは実際に、設定して使ってみましょう。

1. VS CodeでMCPサーバーを登録する

GitHub CopilotにMCPサーバーを読み込ませるには、mcp.jsonというファイルに設定を書くことで自作MCPサーバーを読み込めます。
まずはVSCode上で、Ctrl+Shift+pを押し、「MCP: Open Remote User Configuration」をクリックします。
するとmcp.jsonが開くので、下記のように編集して下さい(mcp.jsonのパスは、環境によって異なります)。
なお、commandとargsの値も、環境によって異なります。

mcp.json

{
	"servers": {
		"Excel MCP Server": {
			"type": "stdio",
			"command": "/usr/local/bin/uv",
			"args": [
				"--directory",
				"/workspace/blog/assets/mcp-server-python-basic",
				"run",
				"main.py"
			]
		}
	}
}

uvを用いている場合、commandの値はターミナルにて下記を実行したときの値となります。


$ which uv

また、argsの値は、mcpサーバーのソースコードを配置している箇所を絶対パスで指し示しています。

2. MCPサーバーを起動する

設定ファイルを保存すると、左ペインのExtensions > 「MCP SERVERS – INSTALLED」にExcel MCP Serverが追加されています。
歯車マーク > Start Server を実行すると、MCPサーバーの起動が完了します。
これで Copilot が Excel MCP Server を利用できる状態になりました。

MCPサーバーの起動方法

MCPサーバーの起動方法

3. MCPサーバーで設計書を読み取らせ実装する

今回使うExcelは、下記3シート構成の簡易的なサンプルAPI設計書です。

  • 変更履歴
  • インターフェース
  • 処理詳細

Copilot に以下のように依頼してみます。


#Excel MCP Server で`機能設計__UserInfo取得API.xlsx`を確認し、main.pyにfastAPIで作成して下さい。まずはテストコード等は不要で、実装コードだけで作成して下さい。

今回の指示で、Copilotは次のようにMCPサーバーを活用していました。

  1. excel_list_sheets で、設計書にあるシートを確認
  2. 必要なシート(インターフェース、処理詳細)を excel_read_sheet で読み取る
  3. 取得した内容を解析し、設計書の意味を理解
  4. 設計書に従ってAPIを実装

下記の実行結果を見ると、実際に「Ran excel_read_sheet – Excel MCP Server (MCP Server)」と、実行されていることが確認できます。

Github CopilotでMCPサーバーを利用した結果

Github CopilotでMCPサーバーを利用した結果。左が生成されたコード、右が実行ログ

また、こちらが「excel_read_sheet」でインターフェースを読み取っている様子です。
こちらの関数に、読み取りたいExcelとシート名を渡すと、Excelシートの内容が返ってきてることがわかると思います。

excel_read_sheetの実行結果

生成AIがexcel_read_sheetを利用した結果

このように、AIがExcelそのままでは読めない構造でも、MCPを通して内容を“テキスト化して渡す”ことで、実際の設計書を理解させることが可能になります。

実務で期待できる効果

今回のように、本来生成AIには渡しにくいデータも、MCPサーバーを用いれば簡単に渡せるようになります。
今回作成したMCPサーバーの利点は以下のとおりです。

  • 生成AIにコピー&ペーストして渡す手間が減少
  • ソースコードの雛形作成の初速が劇的に向上
  • 同様の形式の設計書に対する実装時間を大幅に短縮

特に似たような形式のExcel設計書が多くある現場では、非常に大きな効果が出ます。
また、実装後もソースコードと設計書を比較させて確認するなど、保守フェーズにも利用できます。

まとめ

MCPサーバーは、AIと外部リソースの間に「標準化された接続点」を用意できる仕組みです。
どのツールを呼び出し、どの形式でデータを受け渡すかといった連携仕様を統一できるため、AI活用の範囲を無理なく拡張していくことができます。
今回紹介した Excel MCP Server はその一例ですが、同じアプローチで社内ツールやログ、ドキュメント、APIなども段階的に取り込むことが可能です。
MCPサーバーを利用することで、

  • “AIに便利な道具”を簡単に提供できる
  • 取り扱うデータ範囲を明確に制御できる
  • 小さく導入し、必要に応じて拡張できる

といった利点が得られ、AI活用における「データをAIへどう渡すか」という課題に対する根本的な解決策となります。

生成AI活用支援サービスのご紹介

Tech Funでは、お客様のフェーズに合わせ、生成AI活用に向けた支援を3つのパックでご提供しています。

  1. 無料診断パック:業務・プロセスの現状を無料で診断し、生成AI活用の可能性をレポートします。
  2. 検証(PoC)パック:診断で有効性が確認された業務を対象に、プロトタイプ構築を支援します。
  3. コンサルティングサービス:生成AI導入戦略の策定から運用体制構築までを包括的に支援します。

生成AIに限らず、Web・業務システム開発やインフラ設計など、技術領域を問わずご相談を承っています。「何から始めれば良いか分からない」という段階でも構いませんので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

執筆・編集

Tech Fun Magazine R&Dチーム
Tech Funの生成AI研究に携わるエンジニアが、最新のAIモデル動向やプロンプト設計、実業務への応用手法など、生成AIに特化した知見を執筆・編集しています。
モデル評価や業務シナリオに応じたAI活用設計など、日々のR&D活動で得られる実践的なノウハウをわかりやすく紹介します。

ARTICLE
生成AI関連記事一覧

生成AI関連

MCPサーバーを活用する【前編:自作編】

生成AI関連

MCPサーバーを活用する【後編:実行編】

生成AI関連

生成AIに機密情報を渡していいの?

生成AI関連

小さく始める生成AI活用

記事一覧を見る