図やスキャン画像を含むPDFをAmazon Bedrock Knowledge Basesへ登録するなら、解析方法の選択が検索結果を左右します。デフォルトパーサーは文書からテキストを取り出せますが、画像に含まれる情報まではテキストとして出力しません。グラフや画像内の文字も検索対象に含めたい場合は、基盤モデルパーサーまたはAmazon Bedrock Data Automationが候補になります。
本記事では、Knowledge Basesの「パーサーとしての基盤モデル」が何をする機能なのかを整理します。そのうえで、デフォルトパーサーとの違いを3種類のPDFで比較します。
Knowledge Basesの基本的な構成と作成手順は、次の記事を参照してください。
Knowledge Basesは、データソースを同期すると文書を解析し、検索に使う単位へ分割します。続いて、埋め込みモデルが分割後の内容をベクトルへ変換し、ベクトルストアへ保存します。この最初の解析を担当するのがパーサーです。
文書に書かれた情報がパーサーの出力へ含まれなければ、後段の埋め込みモデルもその情報を検索対象にできません。グラフが示す変化、画像内のラベル、スキャンされた文字を検索したい場合は、埋め込みモデルだけでなくパーサーの選択も重要です。

Amazon Bedrock Knowledge Basesでは、デフォルトパーサー、基盤モデルパーサー、Amazon Bedrock Data Automationパーサーを選択できます。
| パーサー | 主な特徴 | 課金単位 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| デフォルトパーサー | テキストファイルやPDFからテキストを抽出する | パーサー利用料なし | テキスト中心の文書を扱う場合 |
| 基盤モデルパーサー | 視覚対応モデルで図、表、グラフ、画像を解析する。解析用プロンプトを変更できる | モデルの入力・出力トークン | 視覚情報を含む文書を扱う場合、抽出方法を調整したい場合 |
| Bedrock Data Automation | 追加のプロンプトを用意せず、マネージドな処理でマルチモーダルデータを解析する | 文書のページ数または画像数 | ページ数をもとに費用を見積もりたい場合 |
デフォルトパーサーは、TXT、Markdown、HTML、Word、Excel、PDFなどを入力として受け付け、文書内のテキストを抽出します。パーサーの利用料はかかりませんが、処理できるのはテキストデータを含むファイルに限られます。
基盤モデルパーサーは、PDF内の図、グラフ、表、画像に加え、JPEGとPNGも解析できます。抽出した画像は、Knowledge Basesの作成時に指定したS3のマルチモーダルストレージへ保存されます。また、解析用プロンプトを変更できるため、「図中の凡例を省略しない」「表をMarkdown形式で出力する」といった抽出方針を指定できます。
AWS公式ドキュメントの対応モデルとリージョンの一覧では、基盤モデルパーサー向けにClaude、Nova、Llama 4の各ビジョン対応モデルが案内されています。モデルとリージョンの組み合わせは更新されるため、構築時点の一覧を確認します。
Bedrock Data Automationも視覚情報を扱えます。基盤モデルパーサーがモデルの入出力トークンで課金されるのに対し、Bedrock Data Automationはページ数または画像数が料金の基準です。2026年9月8日時点では、Knowledge BasesのBedrock Data Automationパーサーは米国西部(オレゴン)でプレビュー提供されています。対応リージョンや提供状況は変わるため、採用前に最新情報を確認してください。
比較には、構成の異なる3種類のPDFを使います。左はテキストのみで構成した生成AIの解説資料(3ページ)、中央はテキストとグラフを含む調査資料(5ページ)、右はテキストデータを持たないダミー請求書のスキャンPDFです。3つのPDFを同じ解析設定で取り込み、デフォルトパーサーと基盤モデルパーサーで検索結果がどう変わるかを確認します。
中央のPDFには、アドビが公開した「国内外のマーケター/消費者の生成AI活用実態調査」の調査資料を使用しました。

比較では、パーサー以外の設定を同じにします。埋め込みモデル、ベクトルストア、チャンク戦略、検索件数が異なると、パーサー以外の要因が結果へ混ざるためです。
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| AWSリージョン | ap-northeast-1 |
| データソース | Amazon S3 |
| 比較する解析戦略 | デフォルトパーサー/基盤モデルパーサー |
| 解析用モデル | jp.anthropic.claude-haiku-4-5-20251001-v1:0 |
| 解析用プロンプト | デフォルト |
| チャンク戦略 | 固定(3,072トークン/オーバーラップ10%) |
| 埋め込みモデル | amazon.titan-embed-text-v2:0 |
| ベクトルストア | Amazon S3 Vectors |
解析用モデルには、日本向けGeo inference profileのjp.anthropic.claude-haiku-4-5-20251001-v1:0を指定しました。Claude Haiku 4.5の公式モデルカードによると、このプロファイルを東京リージョンから使用した場合、推論リクエストは東京または大阪で処理されます。
データソースはパーサーごとに分けます。Knowledge Basesでは、データソースの接続後に解析戦略の種類を変更できません。同じKnowledge Base内で比較する場合も、デフォルトパーサー用と基盤モデルパーサー用にデータソースを作成します。
各PDFには、抽出できた情報の差が表れやすい質問を用意します。
| 確認したいこと | 質問例 | |
|---|---|---|
| テキストPDF(生成AI解説) | 通常の文章を両方のパーサーが検索できるか | 「生成AIの主な活用例を教えてください」 |
| グラフPDF(アドビ調査資料) | 項目名と割合を対応づけて読み取れるか | 「生成AIを業務で活用する上での懸念点で挙げられた回答と割合をすべて列挙してください」 |
| スキャンPDF(ダミー請求書) | 画像内の文字や金額を検索対象にできるか | 「請求書の合計金額を教えてください」 |
「生成AIの主な活用例」を尋ねると、左のデフォルトパーサーと右の基盤モデルパーサーのどちらも回答を生成できました。デフォルトパーサーは、文章作成、要約、アイデア創出、プログラミング支援、社内ナレッジ検索、翻訳、情報整理を列挙しています。基盤モデルパーサーも同様の活用例を挙げました。
一方、基盤モデルパーサー側の回答には、同じKnowledge Baseに登録したアドビの調査資料から、マーケティング業務での活用例と割合も含まれています。質問の範囲が広いため、関連する別のPDFも検索対象になったと考えられます。テキストのみのPDFへの質問には、どちらのパーサーも回答できました。

グラフのキャプションを指定し、「生成AIを業務で活用する上での懸念点と割合」をすべて尋ねました。左のデフォルトパーサーは、「AIの利用に関する社内ガイドラインの不在:36.1%」をはじめとする6項目を挙げましたが、これは指定したグラフの内容ではありません。右の基盤モデルパーサーは、「生成されたコンテンツの有用性や正確性に対する不安:41%」をはじめ、グラフ内の7項目と割合をすべて回答しました。
デフォルトパーサーは図を読み取れず、PDF内の別の箇所にあるテキスト情報を使って回答したと考えられます。一方、基盤モデルパーサーは、図中の項目名と割合を対応づけて抽出できました。グラフ内にしかない情報を検索・回答に使う場合は、視覚情報を解析できるパーサーが必要です。

スキャン画像だけのPDFには、テキストレイヤーがありません。今回の検証では、ダミー請求書をデフォルトパーサーで同期したところ、テキストコンテンツが見つからないとしてファイルが除外され、同期はエラーになりました。
Encountered error: Ignored 1 files as no text content found in the files [Files: s3://.../documents/SCAN_PDF.pdf]. Call to Customer Source did not succeed.
このPDFは、デフォルトパーサー側の検索対象に登録されませんでした。そのため、合計金額を尋ねても、左の画面では回答できない旨が英語で表示されています。
右の基盤モデルパーサーは、請求書の合計金額を「¥1,100,000」と回答しました。これは元の請求書に記載された金額と一致します。テキストデータを持たないスキャンPDFでは、基盤モデルパーサーが画像内の文字と金額を読み取り、質問に回答できることを確認できました。

テキストだけの文書が中心なら、まずデフォルトパーサーを検討します。パーサー利用料がかからず、テキスト中心の検索要件を満たせるためです。
グラフやスキャン画像の情報が回答に必要なら、基盤モデルパーサーが候補になります。抽出用プロンプトを調整したい場合にも適しています。ただし、PDFではテキストだけのページも基盤モデルで解析されます。文書の種類が混在する場合は、S3プレフィックスやデータソースを分けると料金を管理しやすくなります。
ページ単位で予算を立てたい場合や、プロンプトを用意せずマネージドな解析を使いたい場合は、Bedrock Data Automationも比較対象になります。対応リージョン、ファイル形式、料金を確認し、実データの一部で精度と費用を測ってから選びます。
今回の検証では、テキストのみのPDFには両方のパーサーが回答できました。グラフを含むPDFでは、デフォルトパーサーは指定した図に回答できず、基盤モデルパーサーは図内の7項目と割合をすべて回答しました。テキストレイヤーを持たないスキャンPDFでは、デフォルトパーサーは同期時にファイルを除外しましたが、基盤モデルパーサーは画像内の合計金額を正しく回答しました。
パーサーとしての基盤モデルは、PDFや画像に含まれる視覚情報を読み取り、Knowledge Basesで検索できる形へ変換するための選択肢です。デフォルトパーサーがテキストとして取り出せない情報も扱える一方、モデルの入出力トークンに応じた料金が発生します。
選択基準は、PDFというファイル形式ではありません。回答に必要な情報がテキストレイヤーにあるか、画像の中にあるかで判断します。次の記事では、Model invocation loggingと検索APIのレスポンスを使い、解析料金、処理単位、チャンク、画像検索結果の扱いを詳しく確認します。
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