Case Studies

生成AIによる構造化出力とベクトル検索で、SES案件探索を効率化

プロジェクト情報
検証対象 生成AI
主要技術 構造化出力、埋め込みモデル、GCP、Vertex AI、Gmail、Pub/Sub、Firestore

企業では日々、多種多様なデータがやり取りされています。

中でもメールやチャット、PDFなどの文書データは、決まった形式を持たない非構造化データが大半を占めています。

これらは人が読むには十分でも、項目名や記載方法がバラバラなため、必要な情報をピンポイントで検索したり、分析したりすることが難しいという課題があります。

こうした課題を解決する手段となるのが、生成AIによる構造化出力(Structured Output)です。

生成AIを活用することで、例えば非定型なメール本文から「単価」「開始日」「契約期間」などの項目を自動で抽出し、検索や分析に適した構造化データへと変換することが可能になります。

このようにデータを構造化して蓄積することで、従来は扱いづらかった情報の検索性が大幅に向上します。

Tech Funでは、この構造化出力に加えベクトル検索(Semantic Search)を組み合わせることで、インサイドセールスチーム(以下ISチーム)が扱う大量のSESの案件紹介メールの中から、人材にマッチする案件を効率よく発見できるシステムを開発しました。

※ベクトル検索については、こちらのサービス事例記事をご参照ください。

Tech FunのISチームでは、SES案件の情報収集を日常的に行っています。

しかし、取引先から送られてくるメールは1日あたり6,000件を超え、その中から条件に合う案件を探すことが大きな負担となっていました。

主な課題は以下の通りです。

  • 案件紹介メールと人材紹介メールが混在しており、確認に時間がかかる
  • 実際に送られてくるメールのうち、案件紹介メールは全体の約4割程度にとどまり、それ以外は人材紹介などの連絡が多く、案件選定の観点では確認対象外メールとなっていました。
    しかし、送信元アドレスや件名では分類が難しく、担当者が1件ずつ目視で確認する必要があり、作業負担の増加につながっていました。

  • メールアプリの検索機能では、単価・スキル・期間など複数条件での絞り込みが難しい
  • メールアプリの検索ではキーワード検索しか行えず、「単価が◯円以上」「契約開始が9月」などの条件指定ができません。
    そのため、1件ずつメールを開いて確認する必要があり、効率的な案件探索が困難でした。

  • 条件に合う案件をスプレッドシートに転記する作業
  • 案件名、予算単価、契約類型、業務内容、必須スキルなど、17項目をスプレッドシートに転記する必要がありました。
    条件に合う案件の候補が複数ある中で、毎回メールからこれらを抜き出して転記するのには多くの工数を要しました。

  • 空き人材のスキルに合った案件を探し出すのが難しい
  • SESでは、案件の条件が良くても、社内の空き人材とスキルが合わなければ受注できません。
    担当者は日々変動する空き人材のスキルシートを確認し、その内容に基づいて案件を探す必要があります。
    しかし、案件紹介メールとスキルシートを突き合わせて都度判断するのは手間がかかり、人材の入れ替わりやスキル更新のたびに検索の観点を切り替えなければならないという課題がありました。

これらの課題により、メール全体の確認も追いつかず、条件に合う案件を見逃してしまうリスクが常に存在していました。

このような背景から、Tech Funでは生成AIを活用し、大量のメールから必要な情報だけを自動抽出・整理できるシステムを開発しました。

さらに、案件情報と人材スキルをベクトル検索で照合することで、人材にマッチした案件を検索できる仕組みも取り入れています。

今回開発したSES案件マッチングシステムの仕組みについて紹介します。

このシステムは、Gmailに届くメールを自動的に解析・分類し、案件情報を構造化して蓄積することで、効率的な検索とマッチングを実現しました。

処理の流れ ー 案件紹介メールデータの蓄積

  • 1.
    Gmail APIで監視設定を行い、対象メールをPub/Sub経由でCloud Runへ自動送信
  • 2.
    メール情報をデータベース(Firestore)に保存
  • 3.
    データベースへの保存をトリガーとして、別のCloud Runを呼び出す
  • 4.
    生成AIがメール本文を解析し、以下のように自動フィルタリング
    • ・案件紹介メール
    • ・人材紹介メール
    • ・関係ないメール
    さらに「こういう案件は除外したい」といった自然言語による条件指定にも対応
  • 5.
    案件紹介メールで、フィルタリング通過した案件のみを構造化出力およびベクトル化し、データベースに登録

構造化出力により抜き出す項目の一例

  • 企業名
  • 案件名
  • 契約開始日
  • 単価(最大、最小、原文)
  • 月基準時間(最大、最小、原文)
  • 必須スキル など、合計19種類29項目

このように、メールを自動解析し、案件紹介メールのみを検索しやすい形で保存することで、課題となっていた「案件と人材紹介メールの混在」と「Gmailでは単価・スキル・期間など複数条件で絞り込めない」という問題を解消しました。

システムの全体像は以下の通りです。

IS担当者による利用イメージ

今回開発したSES案件マッチングシステムでは、担当者が利用できる検索方法を 「フィルター検索」と「AI検索」の2種類に分けています。

フィルター検索

担当者は契約開始日や必須スキル、単価などの複数条件を組み合わせて案件を検索できます。

これまでGmailではキーワード検索しか行えず、ピンポイントな絞り込みや範囲検索が難しい状況でしたが、本システムにより複数条件での詳細検索が可能になりました。

AI検索

AI検索では、人材のスキルシートと検索キーワードを入力するだけで、その人材にマッチする案件を自動取得します。

AIが候補を事前に絞り込むため、担当者は確認すべき案件を効率的に把握できます。

ベクトル検索による人材×案件マッチング

本システムでは、構造化出力によって案件を整理するだけでなく、ベクトル検索を活用して人材とのマッチングを支援する仕組みも取り入れました。

ベクトル検索とは、テキストの意味的な類似度を数値化し、“似た内容の文章”を探し出すための検索技術です。

本来は完全一致やキーワード検索とは異なり、文章全体の意味をもとに類似データを取得するための仕組みとして使われます。

参考:https://www.techfun.co.jp/solutions/case_25/

しかし、人材とSES案件のマッチングでは、単に「似ている文章」を取るだけでは実用的な結果が得られません。

そこで我々は、SES案件データと人材のスキルシートデータを要約した上で、同じ形式の文章構造に整える工夫を行いました。

これにより、ベクトル検索で両者の内容をより適切に比較できるようになり、マッチングの精度を向上させることができました。

このように、文章構造をそろえるという工夫により、ベクトル検索でも実用的なマッチング結果を得ることが可能になりました。

結果として、「人材が活躍できそうな案件」を高い精度で抽出できるようになっています。

確認作業に集中できるUI設計

本システムでは、ISチームの担当者がより少ない操作で案件確認を進められるよう、UIにもいくつかの工夫を取り入れました。

案件情報はWebアプリ上に一覧表示され、条件に合わない案件はワンクリックで非表示にできます。

また、条件に合う案件はスプレッドシートへ自動転記でき、転記後は対象案件がリストから消える仕組みです。

このように、画面上には常に「検討対象の案件」だけが残るため、担当者は「確認→判断→記録」の流れを途切れさせずに進められます。

また、同一案件が再送された場合でも、常に最新の情報だけが表示されるよう自動で更新される仕組みを備えています。

これらの設計により、余分な情報に煩わされることなく、常に最新かつ必要な案件だけに集中して確認を進められるようになりました。

本システムの導入により、次のような効果が得られました。

  • メール確認や転記にかかる時間を大幅に削減し、担当者の処理件数が従来比で2.5倍に向上した
  • 再送や条件変更の案件にも自動で気付けるようになり、最新情報を踏まえた判断が可能になった
  • フィルター検索により、契約開始日や単価、スキル条件などを柔軟に組み合わせて検索できるようになり、条件に合う案件を効率的に検索できるようになった
  • AI検索によって、人材にマッチした案件を発見するまでの時間を大幅に短縮できた

このようにして、生成AIをシステムに組み込むことで、SES案件探索業務の一連の業務効率を大きく向上させました。

今回は、生成AIの構造化出力とベクトル検索を組み合わせることで、非構造化データであるメールを“検索できる形”へと変換し、検索効率を高めることができました。

本システムは、メール処理や情報整理といった日常的な業務の中で、生成AIを実用的に活用するための一つのアプローチです。

人が行っていた確認作業をすべて置き換えるのではなく、AIが得意とする「分類」「整理」「検索」を担わせることで、担当者はより判断や提案といった付加価値の高い業務に専念できるようになります。

また、この仕組みはメールに限らず、他の非構造化データにも応用可能です。

例えば、見積書・議事録・問い合わせログ・チャット履歴など、形式が一定でない文書を自動で整理・検索できるようにすれば、情報の再利用や社内ナレッジの活用にも大きく貢献します。

Tech Funでは今後も、こうした生成AI技術を活かし、さまざまな情報を「検索できる知識」に変える取り組みを推進していきます。

本事例の詳細についてご関心のある方は、ぜひTech Funまでお気軽にお問い合わせください。

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