はじめに – 生成AIは企業でどう活用されている?
ChatGPTの登場以来、企業における生成AIの導入が急速に広がっています。
代表的な導入例の一つは、請求書や発注書といったビジネス文書のチェック作業の自動化です。
これまで人手に頼っていたチェック作業を生成AIが担うことで、ヒューマンエラーを防ぎながら、業務効率を大幅に向上させる取り組みが始まっています。

生成AIならビジネス文書のチェック作業が容易に
発注書や請求書などのビジネス文書には、契約条件や金額、日付、支払条件など、多くの重要な情報が含まれます。
これらをすべて人間の目で確認するには限界があり、うっかりミスがトラブルに発展することもあります。
生成AIを活用することで、文書の内容を正確かつ自動でチェックでき、業務負担を軽減しながら精度の高い確認作業が可能になります。
Tech Funでは発注書のチェック作業に生成AIを導入
Tech Funでは、多数の外注先とのやり取りの中で、日常的に発注書を作成・送付しています。
従来は、見積書をもとに担当者が発注書を作成し、複数人による目視チェックで誤りを防いでいました。しかし、人手による確認には限界があり、チェック漏れや修正の手戻りが発生しやすいという課題がありました。
そこで、生成AIを活用した「発注書自動チェックシステム」を社内で開発し、チェック作業の効率化と精度向上を図ることにしました。
生成AIを活用した発注書自動チェックシステムの概要
自動チェックの結果
このシステムでは、外注先から受領した「見積書」と社内担当者が作成した「発注書」を、生成AIが自動で読み取ります。
これらの文書内容を照合・分析し、発注書が適切に作成されているかを確認します。
主なチェック項目は次の通りです。
- 注文年月日
- 契約条件
- 契約期間
- 責任者
- 支払条件
生成AIがこれらの項目を即座に抽出・照合することで、人手による作業を大幅に削減しつつ、漏れのない正確なチェックを実現しています。
次のスクリーンショットは、生成AIが文書のチェックを行い、スプレッドシートに結果を出力したイメージです。

このシステムの重要な点は、生成AIが単にチェックを行うだけでなく、その判定理由を的確に提示してくれるところです。例えば、以下のように説明されます。
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チェック項目契約期間:見積書と相違ないか
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判定TRUE
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理由注文書の契約期間「2025年8月1日 ~ 2025年9月30日」と見積書の契約期間「2025/08/01 ~ 2025/09/30」は一致しています。
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チェック項目精算条件:作業時間単位は見積書または見積依頼書と相違ないか
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判定FALSE
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理由注文書の精算条件には「作業時間単位:15分毎/日」と記載がありますが、見積書の精算条件には作業時間単位に関する記載がないため、相違ないか確認できません。
このように、判定結果とその根拠が明示されることで、担当者が目視で最終確認を行う際に、注目すべきポイントが明確になります。
システムのアーキテクチャ
また、システム全体は以下の構成で動作しています。

Googleドライブに保存した関連ファイルを、Google Apps ScriptがAWS Lambdaに送信。マルチモーダルLLMがファイルの内容を読み取り、分析した結果をGoogleスプレッドシートに記録する、という流れになっています。
AWS Lambdaを経由させることで、Amazon CloudWatch LogsにマルチモーダルLLMの実行ログを記録できる点も、設計上のポイントです。
実際のコード
マルチモーダルLLMへの指示を記述した実際のコードもご紹介します。
チェック項目は以下のように定義しています。

チェック結果の出力形式については、次のように指示を与えています。

発注書自動チェックシステムの導入効果
本システムの導入により、次のような効果がありました。
- 誤記や入力漏れなど、発注書の作成ミスを高い確率で検出できるようになった
- 発注書の作成からチェック完了までの所要時間を大幅に短縮できた
- 生成AIがチェック結果の理由も自動で出力するため、担当者の目視による最終チェックも効率化した
- 外注先からの修正依頼や、発注書の再作成が必要となるケースを減らすことができた
このように、生成AIを業務に活用することで、発注業務全体の生産性と品質を向上させることができました。
生成AIならビジネス文書の自動確認が容易に
今回の事例のように、生成AIは単なる文章作成だけでなく、高度なビジネス文書の自動確認や、整合性のチェックにも活用されるフェーズに入っています。
特に、発注書や請求書などの帳票類はミスが許されない重要な業務です。こうした業務に生成AIを導入することで、生産性と品質の両立が可能になります。
生成AIの活用を検討したい方は、ぜひTech Funまでお問い合わせください。